失業保険(雇用保険)

失業保険は月いくら受給できる?金額の目安と計算式

失業保険は月いくら受給できる?金額の目安と計算式

退職後の生活を支える重要なセーフティネットである「失業保険(雇用保険の基本手当)」。しかし、実際に「月いくら受給できるのか」「いつ振り込まれるのか」といった具体的な金額やスケジュールについては、複雑な計算式が関わるため分かりにくいのが現状です。

本記事では、日本の社会保険制度に精通した専門ライターが、失業保険の受給金額の目安、計算方法、そしてスムーズな受給のための手続きについて、実務的な観点から詳しく解説します。令和7年(2025年)以降の制度動向も踏まえ、正確な情報を提供します。

失業保険(基本手当)の制度概要と受給条件

一般的に「失業保険」と呼ばれている給付金は、正式には雇用保険制度における「基本手当」を指します。これは、会社を退職した人が、次の就職先を見つけるまでの間の生活を安定させ、早期の再就職を支援するために国から支給されるものです。

ただし、退職したすべての人が受給できるわけではありません。受給するためには、以下の厳格な条件を満たす必要があります。

1. 「失業の状態」にあること

雇用保険法における「失業」とは、単に仕事をしていない状態を指すのではありません。以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。

  • 積極的に就職しようとする意思があること
  • いつでも就職できる能力(健康状態・環境)があること
  • 本人やハローワークが努力しても、職業に就くことができない状態にあること

したがって、病気や怪我ですぐに働けない方、妊娠・出産・育児のために当面休養する方、定年退職後にしばらく休養する予定の方、結婚して専業主婦(夫)になる方などは、原則として受給対象外となります(※受給期間の延長措置が可能な場合はあります)。

2. 被保険者期間の要件を満たしていること

離職の日以前の一定期間、雇用保険に加入していた実績が必要です。離職理由によって要件が異なります。

  • 原則(自己都合退職など):
    離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること。
  • 特定受給資格者・特定理由離職者(会社都合退職など):
    離職の日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること。

ここでの「被保険者期間」とは、離職日から1ヶ月ごとに区切っていき、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月(または賃金支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上ある月)を1ヶ月として計算します。

失業保険は月いくら?計算方法と金額目安

失業保険で受給できる金額は、在職中の給与額と年齢によって決定されます。ここでは、具体的な計算式と月収別の目安について解説します。

基本手当日額の計算式

1日あたりに支給される金額を「基本手当日額」と呼びます。計算手順は以下の通りです。

1. 賃金日額の算出
退職前6ヶ月間に支払われた賃金の総額(賞与は除く)を180で割って算出します。
計算式: 離職前6ヶ月の賃金総額 ÷ 180 = 賃金日額

※ここでの「賃金」には、基本給だけでなく、残業代、通勤手当、住宅手当などの各種手当が含まれます。ただし、臨時に支払われる賃金や3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与は含まれません。

2. 基本手当日額の算出
算出した賃金日額に、年齢と賃金に応じた「給付率(50%〜80%)」を掛けて算出します。
計算式: 賃金日額 × 給付率 = 基本手当日額

給付率は、賃金が低い人ほど高く(最大80%)、賃金が高い人ほど低く(最低50%〜45%)設定されています。これは、低所得者の生活保障を手厚くするための仕組みです。なお、60歳〜64歳の方は給付率が45%〜80%となります。

【月収別】受給額の目安(30歳〜44歳の場合)

基本手当は通常、28日分(4週間分)ごとに振り込まれます。ここでは便宜上、28日分を「月額」として試算した目安を紹介します。

  • 離職前月収 20万円の場合
    • 賃金日額:約5,000円
    • 基本手当日額:約5,000円(給付率高)
    • 支給月額(28日分):約14万円
  • 離職前月収 25万円の場合
    • 賃金日額:約8,333円
    • 基本手当日額:約5,700円
    • 支給月額(28日分):約16万円
  • 離職前月収 30万円の場合
    • 賃金日額:約10,000円
    • 基本手当日額:約6,200円
    • 支給月額(28日分):約17万4,000円
  • 離職前月収 40万円の場合
    • 賃金日額:約13,333円
    • 基本手当日額:約6,700円
    • 支給月額(28日分):約19万円

※上記は概算であり、正確な金額はハローワークでの決定通知に従ってください。
※基本手当日額には上限があります。令和7年8月以降の改定などにより、年齢別の上限額(例:30〜44歳で8,055円など)が適用されるため、高年収であっても支給額は頭打ちになります。

自己都合退職と会社都合退職の違い

失業保険の手続きにおいて、「自己都合退職」か「会社都合退職」かは、受給開始時期や給付日数に大きく影響する極めて重要な要素です。

1. 給付日数の違い

失業保険が何日分もらえるか(所定給付日数)は、離職理由と年齢、被保険者期間によって異なります。

  • 自己都合退職(一般の離職者):
    全年齢共通で、被保険者期間に応じて90日〜150日です。多くの場合は90日(期間10年未満)または120日(期間10年以上20年未満)となります。
  • 会社都合退職(特定受給資格者):
    倒産・解雇などで離職した人が該当します。年齢と被保険者期間により、90日〜330日と手厚く設定されています。例えば、45歳以上60歳未満で被保険者期間が20年以上の場合、最大330日支給されます。

2. 給付制限期間(待機期間)の違い

すべての受給者には、ハローワークで求職の申し込みをしてから7日間の「待機期間」があります。この期間は離職理由に関わらず支給されません。

  • 会社都合退職:
    7日間の待機期間満了後、すぐに支給対象期間が始まります。実際に口座に振り込まれるのは、申請から約1ヶ月後が目安です。
  • 自己都合退職:
    7日間の待機期間に加え、原則として「給付制限期間(2ヶ月または3ヶ月)」が設けられています。この期間は失業保険が支給されません。したがって、最初の振込までには申請から約3〜4ヶ月程度かかることになります。

※令和7年度以降の制度改正の議論において、自己都合退職の給付制限期間の短縮や、リスキリング(学び直し)に取り組む場合の特例措置などが検討されています。最新の運用ルールについては必ずハローワークで確認してください。

申請手続きの流れと必要書類

失業保険を受給するためには、ご自身の住所地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に出向き、手続きを行う必要があります。手続きは以下のステップで進行します。

手続きのステップ

  1. 必要書類の準備
    退職した会社から「雇用保険被保険者離職票(1および2)」が届くのを待ちます。通常、退職後10日〜2週間程度で郵送されます。届かない場合は会社へ催促が必要です。
  2. ハローワークで求職の申し込み(受給資格決定)
    管轄のハローワークへ行き、求職申し込みと受給資格の決定を受けます。この日が受給資格決定日となります。
  3. 待機期間(7日間)
    受給資格決定日から7日間は、どのような理由があっても手当は支給されません。
  4. 雇用保険受給説明会への参加
    指定された日時に説明会に参加し、制度の詳しい説明を受けます。「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付されます。
  5. 失業の認定(初回)
    指定された「失業認定日」にハローワークへ行き、「失業認定申告書」を提出します。ここでは、待機期間満了後の失業状態や求職活動の実績が確認されます。
  6. 基本手当の受給(振込)
    失業の認定を受けた日から通常5営業日程度で、指定した金融機関の口座に基本手当が振り込まれます。以降、原則として4週間に1度の認定日ごとにこのプロセスを繰り返します。

必要書類一覧

初回の手続き(ステップ2)で必要な主な書類は以下の通りです。

  • 雇用保険被保険者離職票(-1、-2)
  • マイナンバーカード(ない場合は、通知カード+運転免許証などの身元確認書類)
  • 証明写真 2枚(縦3cm×横2.5cm、正面上半身、最近撮影したもの。※マイナンバーカード提示で省略可能な場合があります)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(ネット銀行など一部指定できない場合があります)
  • 印鑑(スタンプ印不可。書類訂正時に必要な場合があります)

申請期限について

失業保険の受給期間は、原則として「離職日の翌日から1年間」です。この期間内に所定給付日数をすべて受け取る必要があります。手続きが遅れると、給付日数が残っていても期間満了で打ち切られてしまうため、離職票が届き次第、速やかに手続きを行うことが重要です。

受給中の注意点と税金・社会保険

失業保険を受給する際には、いくつかの注意点や、税金・社会保険に関する知識を持っておく必要があります。

不正受給への厳しい処分

失業認定申告書に虚偽の記載を行うと「不正受給」とみなされます。例えば、アルバイトや内職をしたのに申告しなかった場合や、実際には行っていない求職活動を行ったと偽った場合などが該当します。
不正受給が発覚すると、支給停止はもちろん、受給した全額の返還に加え、その2倍の額の納付(いわゆる「3倍返し」)を命じられる可能性があります。

税金(所得税・住民税)の取り扱い

  • 所得税:
    失業保険(基本手当)は非課税所得です。したがって、所得税はかからず、確定申告の必要もありません。
  • 住民税:
    住民税は「前年の所得」に対して課税されます。退職して無収入であっても、前年に所得があれば納税通知書が届き、支払う必要があります。失業保険自体には課税されませんが、退職前の給与に対する住民税の支払いは残る点に注意してください。

社会保険(年金・健康保険)の切り替え

退職により会社の社会保険から脱退するため、ご自身で手続きを行う必要があります。

  • 国民年金:
    お住まいの市区町村役場で国民年金への加入手続きが必要です。失業により保険料の納付が困難な場合は、「退職(失業)による特例免除制度」を申請することができます。
  • 健康保険:
    以下のいずれかを選択します。
    • 国民健康保険に加入する(市区町村役場で手続き)
    • 会社の健康保険を任意継続する(退職後20日以内に手続き)
    • 家族の扶養に入る(家族の勤務先で手続き)

特に国民健康保険料は前年の所得を基準に計算されるため、負担が大きくなる場合があります。市区町村によっては、会社都合退職等の場合に保険料を軽減する制度がありますので、窓口で相談することをお勧めします。

まとめ

失業保険は、次のキャリアへ進むための大切な資金です。月額の目安としては、在職時の給与の約50%〜80%程度(月20万円の給与なら約14万円)が支給されますが、年齢や離職理由によってその金額や期間は大きく異なります。

重要なのは、離職票が届いたら速やかにハローワークで手続きを行うこと、そして正確な求職活動実績を積み上げることです。また、2025年、2026年と制度の改正や料率の変更が予定されています。

個別の受給資格や正確な支給額については、必ず最新情報を厚生労働省やハローワーク公式で確認してください。