失業保険(雇用保険)

失業保険の給付制限は3ヶ月?2025年改正後の原則と例外を解説

失業保険の給付制限は3ヶ月?2025年改正後の原則と例外を解説

会社を退職した際、当面の生活を支える重要なセーフティネットとなるのが雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)です。しかし、自己都合で退職した場合、すぐに給付金を受け取れるわけではなく、一定の待機期間と給付制限期間が設けられています。

これまで長らく「自己都合退職の場合は3ヶ月待たなければならない」というルールが一般的でしたが、近年の法改正によりこの期間は短縮傾向にあります。特に2025年(令和7年)4月1日以降の離職に関しては、制度が大きく変更されています。

本記事では、2025年改正後の最新ルールに基づき、給付制限期間が「原則1ヶ月」になるケースと、依然として「3ヶ月」が適用されるケースの違いについて、実務的な観点から詳しく解説します。

2025年4月改正後の給付制限期間:原則と例外

かつて失業保険の給付制限期間は一律で「3ヶ月」とされていましたが、労働者の円滑な労働移動を支援するため、段階的に短縮されてきました。2020年10月には原則2ヶ月へと短縮され、さらに2025年4月からは原則1ヶ月へと変更されています。現在適用されているルールは以下の通りです。

原則:給付制限期間は1ヶ月に短縮

2025年(令和7年)4月1日以降に離職した方については、正当な理由のない自己都合退職であっても、給付制限期間は原則として1ヶ月となります。これは、転職やキャリアアップを目的とした退職者が、より早期に次のステップへ進めるよう経済的に支援するための措置です。

ただし、この「原則1ヶ月」が適用されるのは、過去5年間のうち自己都合退職が2回までの場合に限られます。

例外:3ヶ月の給付制限が適用されるケース

「3ヶ月制限が本当か」という疑問に対する答えは、一部のケースにおいては「イエス」となります。以下の条件に該当する場合は、改正後も給付制限期間は3ヶ月となります。

  • 過去5年間に3回以上の自己都合退職がある場合
    短期間に安易な離職と受給を繰り返すことを防ぐため、過去5年以内(今回の離職を含む)に、正当な理由のない自己都合退職による給付制限を2回以上受けている場合、3回目の離職からは給付制限期間が3ヶ月となります。
  • 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(懲戒解雇など)の場合
    重責解雇(懲戒解雇など、労働者側に重大な過失がある解雇)の場合は、給付制限期間の短縮措置の対象外となり、従来通り3ヶ月の制限が適用されます。

特例:給付制限が解除されるケース(リスキリング支援)

2025年の改正では、自ら教育訓練(リスキリング)を行う退職者への優遇措置も強化されています。離職期間中または離職前から、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講する場合、自己都合退職であっても給付制限が解除され、待機期間(7日間)経過後すぐに支給が開始される仕組みが導入されています。

給付制限期間が適用される対象者と条件の整理

失業保険の給付開始時期は、退職の理由によって大きく異なります。「会社都合」か「自己都合」か、また自己都合であっても「正当な理由」があるかどうかで扱いが変わります。

会社都合退職(特定受給資格者)

倒産、解雇(懲戒解雇を除く)、事業所移転による通勤困難など、会社側の事情や不可抗力によって離職を余儀なくされた場合は「特定受給資格者」となります。この場合、給付制限期間はありません。ハローワークで手続きを行い、7日間の待機期間が経過した後、速やかに給付が始まります。

正当な理由のある自己都合退職(特定理由離職者)

形式上は自己都合退職であっても、病気、怪我、妊娠、出産、育児、介護、配偶者の転勤に伴う転居など、やむを得ない事情がある場合は「特定理由離職者」と認定される可能性があります。この場合も、会社都合退職と同様に給付制限期間は適用されません。診断書や転居の証明など、事情を裏付ける疎明資料の提出が必要です。

正当な理由のない自己都合退職(一般の離職者)

転職希望、現状への不満、結婚(転居を伴わない場合)など、個人的な理由での退職がこれに該当します。このケースにおいてのみ、前述の「給付制限期間(原則1ヶ月、場合により3ヶ月)」が適用されます。

比較まとめ

  • 会社都合(倒産・解雇など):給付制限なし(待機期間7日のみ)
  • 正当な理由あり自己都合(病気・介護など):給付制限なし(待機期間7日のみ)
  • 一般の自己都合(2025年4月以降、5年以内2回まで):給付制限1ヶ月
  • 一般の自己都合(5年以内3回目以上、または懲戒解雇):給付制限3ヶ月

給付内容と金額の計算方法

失業保険で受け取れる1日あたりの金額を「基本手当日額」といいます。これは在職中の給与額に基づいて算出されます。

基本手当日額の計算式

基本手当日額は、離職する直前の6ヶ月間に支払われた賃金の合計(賞与等は除く)を180で割った「賃金日額」に、所定の給付率(50%〜80%)を掛けて算出します。

  • 計算式:賃金日額 × 給付率(50%〜80%)

給付率は、賃金が低い方ほど高い率(80%)が適用され、賃金が高い方は低い率(50%)が適用される仕組みになっています。また、年齢区分ごとに「上限額」と「下限額」が設定されています。

計算例(30歳〜44歳の場合の目安)

例えば、退職前6ヶ月の月給平均が26万円(賃金日額約8,666円)の方の場合、給付率はおおよそ60〜70%程度となり、基本手当日額は5,000円〜6,000円程度になります。月額換算(28日分)では約14万円〜16万円程度が支給されるイメージです。

※正確な金額はハローワークでの決定通知書により確定します。

所定給付日数

給付を受けられる日数(所定給付日数)は、雇用保険の被保険者であった期間と離職理由、年齢によって決まります。

  • 自己都合退職の場合:被保険者期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日です。
  • 会社都合退職の場合:年齢と被保険者期間に応じて90日〜330日の間で設定され、自己都合よりも手厚くなっています。

申請手続きの流れと必要書類

失業保険を受給するためには、住所地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)へ本人が出向いて手続きを行う必要があります。郵送やオンラインのみで完結する手続きではありません(一部例外を除く)。

手続きのステップ

以下は標準的な手続きの流れです。

  1. 退職と離職票の受領
    退職後、会社から「雇用保険被保険者離職票(1および2)」が届きます。通常、退職日から10日〜2週間程度で郵送されます。届かない場合は会社へ催促してください。
  2. 求職の申し込み(ハローワーク)
    必要書類を持参し、管轄のハローワークへ行きます。「求職申込み」を行い、離職票を提出して受給資格の決定を受けます。この日が「受給資格決定日」となります。
  3. 待機期間(7日間)
    受給資格決定日から7日間は「待機期間」です。この期間は失業状態にあることが確認される期間であり、アルバイト等は一切禁止です。
  4. 雇用保険説明会への参加
    指定された日時に開催される説明会に参加します(現在は動画視聴等で代替される場合もあります)。ここで「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付されます。
  5. 給付制限期間(1ヶ月〜3ヶ月)
    自己都合退職の場合、待機期間満了の翌日から給付制限期間に入ります。
  6. 失業の認定(初回)
    指定された「認定日」にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出します。求職活動の実績が必要です。
  7. 受給開始
    認定を受けた日数分の基本手当が、指定口座に振り込まれます。以降、原則4週間に1度の認定日にハローワークへ通い、認定を受けることで給付が継続されます。

必要書類

初回手続き時に必要な主な書類は以下の通りです。

  • 雇用保険被保険者離職票(-1、-2)
  • マイナンバーカード(またはマイナンバー確認書類+身元確認書類)
  • 写真2枚(縦3cm×横2.5cm、マイナンバーカード提示で省略可能な場合あり)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
  • 印鑑(スタンプ印不可)

申請期限

失業保険には受給できる期間(受給期間)が決まっており、原則として離職日の翌日から1年間です。手続きが遅れると、所定給付日数をすべて受け取る前に期限が来てしまい、残りの日数が受給できなくなる可能性があります。離職票が届き次第、速やかに手続きを行うことが重要です。

給付制限期間中の注意点と過ごし方

給付制限期間中は、まだ手当が支給されない期間ですが、制度上のルールを守る必要があります。

1. アルバイト・パートの可否

給付制限期間中(待機期間7日間終了後)であれば、アルバイトをすることは可能です。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 週20時間以上の就労は「就職」とみなされる:雇用保険の加入要件を満たすような働き方(週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みなど)をすると、「再就職」したと判断され、失業保険の受給資格自体がなくなる可能性があります(その場合、要件を満たせば「再就職手当」の対象になることはあります)。
  • 申告の義務:アルバイトをした日や収入については、後の失業認定日に必ず申告しなければなりません。隠して受給しようとすると不正受給となり、倍返し以上のペナルティ(3倍返し)が課されます。

2. 求職活動実績の作成

給付制限期間中であっても、次回の認定日までに原則として2回以上(初回認定の場合は1回以上など緩和措置あり)の求職活動実績が必要です。ハローワークでの職業相談、求人への応募、セミナー参加などが実績として認められます。単なる求人検索だけでは実績にならないため注意してください。

3. 健康保険と年金の手続き

退職により会社の社会保険から抜けるため、次の就職先が決まるまでは「国民健康保険」および「国民年金」への切り替え手続き、または家族の被扶養者になる手続きが必要です。これらは市区町村役場や年金事務所で行います。失業により収入が減少した場合、保険料の減免申請ができる場合もあるため、窓口で相談することをお勧めします。

まとめ

2025年4月の制度改正により、自己都合退職に伴う給付制限期間は「原則1ヶ月」へと短縮されました。これにより、転職活動中の経済的な不安が軽減され、よりスムーズな再就職が期待されます。

しかし、過去5年以内に複数回の自己都合退職がある場合や、懲戒解雇に該当する場合は、依然として「3ヶ月」の制限が適用されます。ご自身のケースがどちらに当てはまるか、離職前に履歴を確認しておくことが大切です。

また、会社都合退職や正当な理由のある自己都合退職であれば、そもそも給付制限は適用されません。離職票の離職区分が実態と異なっている場合は、ハローワークで異議を申し立てることも可能です。

雇用保険制度は個別の事情によって判断が分かれる部分も多いため、不明点は自己判断せず、必ず専門窓口で確認してください。

最新情報は厚生労働省やハローワーク公式で確認してください。